1. 居住地に関わらず、全国の受験生に受験機会を提供。大学入試におけるCBT活用の可能性

居住地に関わらず、全国の受験生に受験機会を提供。大学入試におけるCBT活用の可能性

2023年1月10日 導入事例

居住地に関わらず、全国の受験生に受験機会を提供。大学入試におけるCBT活用の可能性

左:当社グループ JIEM 冷水/右:叡啓大学 教学課入試・広報係 大野様

 

 

叡啓大学は広島県公立大学法人が設置し、2021年4月に広島市内に開学した新しい公立大学です。ソーシャルシステムデザイン学部、ソーシャルシステムデザイン学科の1学部1学科で、SDGsを意識したリベラルアーツ科目、実社会の課題に挑む課題解決演習(PBL)など、これからの社会で必要とされる資質・能力を育成するカリキュラムを導入しています。

 

EduLabグループでは同大学の委託を受け、第一期生の入試においてテストセンターとCBT試験のシステムを提供いたしました。大学の一般選抜(教科・科目試験)を、CBT形式によりテストセンターにおいて実施するのは国公立大学では前例のない取り組みです。

 

今回はCBT形式実施のご感想や課題、今後について、叡啓大学教学課 入試・広報係 主任 大野義文様と教育測定研究所 CBT事業部 企画開発室長 冷水佑輔の2名にお話を伺いました。

入試業務の効率化と、新型コロナウイルス感染拡大防止の両立が課題に

CBTとは「Computer Based Testing」の略称で、コンピュータを使った試験実施方式。従来の紙ベースの試験と異なり、一つの会場に集まる必要がなく、受験生の利便性向上や受験機会の拡大が見込まれています。さらに、採点処理や結果通知に要する時間・コストが大幅に削減可能なことから、欧米で先行して活用が進んでいます。日本でも各種資格・検定試験等で採用されるようになってきました。

 

叡啓大学では開学前の2021年2月に、一般選抜においてCBT形式を採用。EduLabグループの教育測定研究所(JIEM)が運営するテストセンターにおいて試験を実施しました。

 

CBT 形式採用の背景として、2021年度一般選抜は、大学入試センター試験が大学入学共通テストへと切り替わり、新設大学は、大学入学共通テストを利用できなかったため、大学独自で教科・科目試験を実施する必要がありました。また、開学前の限られた教職員による入試実施であること、さらに新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策、という3つの課題に直面していたといいます。

 

 

叡啓大学 教学課入試・広報係 大野様

 

 

 

「全国の受験生に公平・公正かつ安全に試験を受けていただける方法はないかと考えたときに、CBT形式のお話を伺う機会がありました。CBT形式であれば大学入学共通テストの代替として教科・科目試験を実施できること、かつ受験生が可能な限り、都道府県を移動することなく受験できる。さらに、入試そのものの運営を委託することで大学側の人的リソースも最小限に抑えられることから実施に踏み切りました」(大野様)

 

実施を決定したのは2020年9月。試験日(2021年2月)までの約5ヶ月でシステムを開発し、会場を選定。実施に関する諸般のルール作りが必要となりました。

 

「非常にタイトなスケジュールでしたが、CBT形式で豊富な実績を持つJIEMさんから様々なご提案をいただき、スムーズに進められました。既存のシステムをうまく活用し、費用を抑えながら、大学側の要望を取り入れていただくなど、柔軟に対応いただきました」(大野様)

 

「コロナ禍でもあり、全国の受験生が移動を最小限に抑えて受験できるようにすることを、大野様が特に意識されていたのを感じました。まずはできるだけ叡啓大学様の受験者数が多いエリアに確実に会場を設置することに注力しました」(冷水)

会場型CBTで受験希望者に平等な受験機会を提供

叡啓大学の一般入試(教科・科目試験)は、2021年2月に、東京、名古屋、大阪、岡山、広島、愛媛、福岡など、10都道府県12会場のテストセンターにおいて実施され、52名の受験生がCBT形式で教科・科目試験を受験しました。

大学の一般入試(教科・科目試験)を、CBT形式によりテストセンターにおいて実施するという国公立大学では前例のない取り組みとなりましたが、トラブルなどもなく試験実施が終了しました。

 

「CBT形式を利用してよかったという思いです。JIEMさんは様々な資格・検定試験でのシステムの開発・運用実績を有しており、全国のテストセンターの数、立地なども含めて、大学入試との親和性が高く、安心してお任せできると思っていました。大学入試は公平、公正な実施が求められ、ミスは許されません。テストセンターでは、スタッフが試験の運営に必要なトレーニングを積んでおり、会場のセキュリティもしっかりしています。試験監督など様々な業務を安心してお任せできました。入試を効率よく安全に実施できたことに感謝しています」(大野様)

 

叡啓大学では、CBT形式での受験終了後に受験者にアンケート調査を実施しており、結果は「非常に良かった」と、「慣れていないので戸惑った」という意見に分かれたといいます。

 

「CBT形式だから結果が出せなかった、というような意見はありませんでした。課題としては、国語の問題は縦書きですが、コンピューターの試験は一般的に横書きで表示されます。また、CBT形式では問題用紙に手で書き込むことはできません。受験生がより解答しやすい仕組みを見つけられたら良いと思います」(大野様)

 

「当社としましても、紙の試験と同じクオリティをCBT形式で実現できないかという点は検討を重ねました。大野様のご指摘のように、手で書き込むことができないという課題は、例えば問題文にラインが引けるようにするとか、メモができるようにするなど、日々開発を進めているところです」(冷水)

 

 

当社グループ JIEM 冷水

withコロナやSDGsなどで、さらなる普及が予想されるCBT形式

「2021年2月当時は、大学入試でCBT形式を利用するということ自体が新しい取り組みでした。その後、大学入試センターから「CBTの活用に関する報告書」も公表され、CBT形式による大学入試の実施が注目されていると考えています。CBT形式の実施方法は、今後も発展していくと考えていますので、叡啓大学での実施結果がこれに寄与することを期待しています」(大野様)

 

「現在は圧倒的に紙の試験が主流ですが、CBTシステムを利用することにより、採点結果をスピーディーに提供できるようになり、また問題用紙や解答用紙の輸送にかかる費用も削減可能となります。また、全国のテストセンターで試験を実施することで、受験者の移動時間や費用の負担が軽減され、より公平な受験機会の提供に寄与すると考えております。大学入試のCBT化を促進することは、当社の果たすべき大きな役割の一つとして、今後も取り組んでいきたいと思います」(冷水)

 

EduLabグループでは、公平・公正な環境下でCBTテストを実施できるテストセンターを全国に設置し、2021年6月から運営を開始しています。「英検S-CBT」をはじめ、各種資格・検定試験に提供しており、大学入試向けの利用機会も整えてきました。

 

政府によるペーパーレス化の推進やSDGsをはじめとする環境問題への意識向上などの背景もあり、従来の紙での試験からCBT形式の試験へと移行する機運はますます高まると予想されます。今後も様々な利用団体様のニーズに応えられるようシステムを改善し、より良いサービスの提供に向け取り組んでまいります。


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